書評『ピープルウェア』amazon:4822281108

さすがに古典として名高く、まだ読みかけであるが最近読んだ本のなかでもかなりの面白さ。特に気に掛かる内容・著者の指摘を列挙しておくと、

  • 昇進の早い組織の危うさ。
    • 本来、期待される仕事をこなす上で能力と経験が足りない人材に権限を与えるのは一見良い事とも受け取れるが、それは責任転嫁の常套手段であるということを理解しておく必要がある。
      • IBMの例がもっとも昇進までに時間が掛かるケースとして載っていて、あながちこの主張は間違いじゃない気になる。
  • 管理者とプログラマー間でコミュニケーションが成立していない状況。
  • 音楽を聞きながらの仕事では「ひらめき」は低下する。
    • たまに音楽を聞きながら作業しているときがあるが、よくよくその状況を思い返すと、思考のための仕事ではなく、こなす仕事(つまり肉体労働)を気持ちよく行っていただけであった。
  • 納期を理由にプレッシャーを掛けられ一時的な作業効率があがってもプロジェクトが終わったら、嫌気がさしてチームから去るあるいは退職するプログラマー
  • 作業時間は、精神集中時間(フロー状態)と肉体作業(頭を使わない作業)時間とに分けて考える。
    • ダラダラとしゃべりながらしている仕事は、確かに頭は使っていないと考える。経験によって培われる「反射」行為で、インプットに対するステレオタイプの反応でまさに肉体作業でしかない、と。
  • 職場環境に(本当の意味で)関心が無い、つまり、プログラマーに良い環境を提供しようと注意すら払わない管理者・経営者。
  • 会社で仕事をするよりもより良い環境が既に他にある。(たとえば自宅の方が静かで集中できて仕事がはかどる/自宅の端末の方が遥かにスペックが良い等)
    • 向上心の高い人材であれば、なけなしの給与を自身の能力を向上させるために惜しみなく機材や設備等に投資する。一方で、状況を変えたがらない会社組織。最初は誰もが会社組織にとっては未熟で特に年齢が若ければ、会社組織の方が色々なものを持ち合わせてそれなりに魅力的である。が、時間の経過すなわち人材と組織の成長に従い、この両者の関係が有る時点で逆転しだすのを私は直に経験した、否、今まさに経験している。過去の良い状況にすがる会社組織とシニカルになるよりも、この逆転を感じたとき、私にとって会社組織が放つオーラが効力を失ったと認めるべきなのだろう。また会社組織もそのような不満をもつ人間を抱えることが限界なのだ、ということを認めるべきなのではないか?(しかしながら、会社組織の限界を認めることになるのでそれは実現しない可能性が大変高い)。人材がより良い環境を求めていること、その環境が無いから組織を出て行くことを理解するべきだ。
  • 知的生産活動への社会の評価が変化、プログラマー復権の兆し。


どれも、決して他人事でない。むしろ今まで何故我慢をしてきたのかを少し考えた方が良いのかもしれない。